大切な人の死を受け止めるために|日本とイギリスに学ぶグリーフケアと死生観
- Locus of Life

- 4月11日
- 読了時間: 7分

大切な人の死を経験したあと、「この悲しみはいつまで続くのだろう」「どうすれば乗り越える方法が見つかるのか」と一人で悩んでいませんか。
人は大切な人を失ったとき、深い悲しみを経験します。心理学では、このような喪失体験に伴う悲嘆のプロセスを Bereavement(ビリーブメント)、あるいは グリーフ(Grief) と呼びます。
しかし、悲しみに向き合う方法は世界共通ではありません。文化によって「悲しみをどう理解するのか」「故人との関係をどう感じるのか」は大きく異なります。
私自身がイギリスで生活を始めたとき、そうした文化の違いを強く感じる出来事がありました。それは「お墓参り」に関する感覚の違いでした。
日本とイギリスの死別文化比較|大切な人の死とお墓参りの違い
日本では、お墓参りは故人に会いに行くような時間です。しかしイギリスでは、日本ほど頻繁にお墓参りをする文化はありません。
さらに墓地の作り方にも違いがあります。日本では通路があり、お墓の上を歩くことは基本的にありませんが、こちらでは目的のお墓に行くために他のお墓の上を通ることもあります。
初めてそれを見たとき、私は少し戸惑いのような感覚を覚えました。しかし日本と西洋の死生観の違いを知るにつれて、その感覚も少しずつ理解できるようになりました。
西洋のグリーフケア|悲しみを表現し、人生を前に進める心理学
西洋の心理学では、悲しみは「感情を表現し整理していくことで癒されていくプロセス」として理解されることが多くあります。その代表的な理論として知られているのが、精神科医 Elisabeth Kübler-Ross(エリザベス・キューブラー=ロス) が提唱した 「悲嘆の5段階モデル」 です。
悲嘆の5段階
否認(Denial): 大切な人を失った直後、「そんなはずはない」と感じる、心を守るための自然な反応です。
怒り(Anger): 次第に現実を感じ始めると、「どうして」と運命や周囲、自分に怒りを感じることがあります。
取引(Bargaining): 「もしあの時こうしていれば」と、違う結果の可能性を考えてしまう段階です。
抑うつ(Depression): 喪失の現実が深く心に届き、強い悲しみや虚しさで日常生活が重く感じられる時期です。
受容(Acceptance): 少しずつ現実を受け入れ、故人との思い出を大切にし、自分の人生を前に進めていく段階です。
最新のグリーフ心理学:Dual Process Model(二重過程モデル)
近年の心理学では、悲しみは単純な段階ではなく、「喪失志向(悲しむこと)」と「回復志向(日常を生きること)」 この二つの心理的プロセスを、まるで振り子のように行き来するものだと考えられています。
また、心理学者 Dennis Klass が提唱した Continuing Bonds(継続する絆)理論 では、亡くなった人との関係は終わるのではなく、形を変えて続いていくと考えられています。この考え方は、日本文化の感覚とも重なる部分があります。
日本のグリーフケアと死生観|「お星さま」として見守ってくれる温かい絆
日本文化では、亡くなった人は完全に「いなくなる存在」というよりも、形を変えて身近に存在し続けるものとして感じられることが多くあります。
例えば日本では、幼い子供たちに
亡くなった人はお星さまになって、空から私たちを見守ってくれているんだよ。
と話すことがあります。この「空から見ている」という感覚は、西洋ではあまり一般的ではない、日本特有の温かい死生観の一つです。
日常生活の中に故人の気配があり、
仏壇に手を合わせる
命日に故人を思い出す
お墓参りをし、墓石を磨く
写真に語りかける
といった行為を通じて、亡くなった人との関係が人生の中に生き続けています。
西洋でも故人の写真を飾る文化はありますが、日本のように「拝む対象」というよりは、今を生きる家族の写真と並べて、生活の一部として自然に溶け込ませるスタイルが一般的です。形は違えど、大切な人の面影を身近に置いておきたいと願う気持ちは、万国共通なのかもしれません。
日本と西洋の死生観:存在のあり方の違い
西洋の伝統的なキリスト教文化では、人は亡くなると魂は神のもとへ行き、この世での人生は完結すると考えられます。つまり、死はこの世界での存在の「終わり」という側面が強調されます。一方、日本では体がなくなっても、魂や存在は何らかの形でここに留まり続けるという感覚があります。
この死生観の違いは、私がイギリスで感じた「お墓の上を歩くことへの違和感」の背景にも繋がっています。
墓地文化の違いの背景
私がイギリスで感じた違和感には、文化だけでなく歴史的な背景もあります。ヨーロッパでは長い間、教会が人々の生活の中心にあり、多くの人々は教会の敷地内や、時には教会内の床下に埋葬されてきました。
例えば、ロンドンの St Paul's Cathedral(セント・ポール大聖堂) でも、床の下には多くの歴史的人物が埋葬されています。初めてその上を歩くと戸惑うかもしれませんが、これは亡くなった人を軽んじているわけではありません。
むしろ「神の祝福が最も近い聖なる場所で眠り、死後もなおコミュニティの一員として在る」という名誉ある考え方に基づいています。ヨーロッパの墓地は日本のように家族単位で管理されるものとは異なり、一定期間を過ぎると再利用されることもあります。こうした背景から、墓地は「静かに思い出す場所」であると同時に、人々の生活空間の一部として機能しているのです。
対して日本では、墓地は「故人の魂が宿る場所」であり「会いに行く場所」としての意味合いが強いです。墓石の前で手を合わせ、歩き方一つにも敬意を払い、静かに守り続けることが大切にされています。
グリーフケアの実践|悲しみと共に生きる自分らしい回復の道
悲しみの表現や癒し方は、文化や個人によって大きく異なります。涙を流して語ることが自然な文化もあれば、空を見上げて静かに思い出を抱くことを尊ぶ文化もあります。そしてその形は、文化という枠さえも超えて、一人ひとりの心の中に存在します。
カウンセリングにおいても、悲しみには「一つの正しい形」などありません。
たとえば、西洋的な死生観の中で育った方が「空からお星さまが見守っている」という日本の感覚に触れて救われることもあれば、逆に日本の方が「いなくなった現実をはっきりと受け入れる」という合理的な向き合い方を知ることで、前を向くきっかけを掴むこともあります。
この記事を通じて、異なる文化の視点に触れることが、「こうあるべき」という重荷を下ろすきっかけになればと思います。
ある人にとっては「現実を認めること」が心の安らぎになり、またある人にとっては「目に見えないつながりを感じること」が癒しになるでしょう。
大切なのは、周囲や一般論と比べることではなく、あなたにとって最もしっくりくる、「自分らしい悲しみの癒し方」を見つけることです。
その模索するプロセスこそが、心にとって最も意味のあるグリーフケア(悲嘆の癒し)になると信じています。
よくある質問(FAQ)
Q. 悲しみは時間が経てば自然に消えますか?
A. 完全に消えるというよりも、形を変えて心の中に残り続けることが多いとされています。その悲しみと共に、どう生きていくかを見つけることが大切です。
Q. グリーフケアとは何ですか?
A. 死別や喪失による悲嘆に寄り添い、その人にとって自然な形で悲しみと向き合うためのサポートです。専門家に話すことで、心の整理を助けることができます。
Locus of Lifeより
大切な人の死を受け止めることは、とても孤独に感じられることがあります。
Locus of Life では、あなたのペースを大切にしながら、悲しみや喪失の体験について安心して話せる時間をご提供しています。「悲しみを手放さなければ」と無理をせず、どうぞそのお気持ちをそのままお聞かせください。
あなたが大切にしてきた絆の形を、一緒に見守らせていただければ幸いです。
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