「日本に帰りたい」だけではなかった|帰りたいのに帰れない、海外生活の複雑な気持ち
- Locus of Life

- 5月29日
- 読了時間: 6分
更新日:5月31日

「日本に帰りたいな。」
海外で暮らしていると、ふとそんな気持ちになることがあります。
私だけなのかなと思っていたのですが、海外生活の長い方と話していると、
同じようなことを口にする人は意外と少なくありません。
でも、不思議なことがあります。
そう思っているのに、いざ帰国の話が具体的になると、
急に気持ちが重くなることがあるのです。
私自身、イギリスで暮らしていて、そう感じることがあります。
今年もそうでした。
私は二年に一度くらい日本へ帰るようにしているのですが、
今年は息子の学校行事もあり、なかなか予定が決まりませんでした。
そうしているうちに中東情勢が不安定になり、航空券の価格も大きく上がりました。
結局、今年の夏の帰国は来年に延期することになりました。
でも今振り返ると、私は最初から少し尻込みしていたのかもしれません。
心の中では帰りたいと思っているのに。
なぜだろう。
帰りたいのに、なぜか足が止まる——そんな複雑な感情
考えてみると、その奥にはいくつかの小さな恐れがあったように思います。
日本へ帰ったら、日本人なのにどこか違って見えるかもしれない。
年老いた母をまた日本に残して、今の生活に戻らなければならない。
また大切な人たちと空港で別れることになる。
そうしたものが、一つではなく、いくつも重なっていたような気がしています。
私たちは「帰りたい」と思うとき、
それを単純なホームシックのように感じることがあります。
でも、人の気持ちは思っている以上に複雑です。
「帰りたい気持ち」と「怖い気持ち」が同時に存在することは、
決して矛盾ではありません。
心理学では、人は安心を求める気持ちと、
変化や喪失を避けようとする気持ちを同時に抱えることがあると言われています。
だから、「帰りたい」と思う気持ちと、「帰るのが怖い」
という気持ちが一緒に存在していても、不思議ではありません。
近づきたいけれど、離れたい。
安心したいけれど、傷つきたくない。
人の心は、ときにそんな複雑さを抱えています。
そう感じるのは、あなたがそれだけ今の場所でも、
これまでの人生でも、懸命に生きてきた証拠なのだと思います。
「帰る」は、ただの移動ではなかった
離婚したとき、一度息子を連れて日本へ戻ろうと真剣に考えたことがあります。
実際に裁判所にも、日本への永久帰国について申請をしました。
でも現実的なことを考え始めると、急にわからなくなりました。
息子の学校。
帰国後の住まい。
仕事。
そして、自分自身の生活。
考えれば考えるほど、
「私は本当に日本へ帰りたいのだろうか」
と感じ始めていました。
結局、その話は実現しませんでした。
裁判所からも息子のためと説得され、元夫からも反対がありました。
でも今振り返ると、不思議なことに、
そのとき少しホッとしていた自分がいたことを覚えています。
結婚してイギリスへ来るとき、成田空港で私は心の中で決めたことがありました。
「この決断を絶対に後悔しない」
「日本にはもう戻らない」
若かった私は、それくらい強い気持ちで飛行機に乗りました。
たぶん、自分で選んだ人生を信じたかったのだと思います。
だから離婚して帰国することを考えたとき、私は現実的な問題だけではなく、
もっと別のものと向き合っていたのかもしれません。
それは、「帰るかどうか」ではなく、過去の自分との約束でした。
私たちは、自分で作った物語の中で生きていることがある
心理学では、人は自分自身についての「物語」を持っていると言われています。
「私はこういう人だ」
「私はこう生きる」
「私はこれを選んだ」
そうした物語は、人生の支えになる一方で、
時として今の自分を縛る苦しさになることもあります。
なぜなら、人は変わるからです。
二十代の自分と、今の自分。
環境が変われば、見える景色も、必要なものも少しずつ変わっていきます。
それなのに、昔の自分が決めた約束だけが、そのまま残り続けてしまうことがあります。
そして気づかないうちに、それが今の自分を苦しくさせることもあるのです。
海外生活で「帰りたい」と願う私たちが、本当に探しているもの
今、改めて思うのです。
私が日本へ帰りたいと思っていたのは、本当に「日本という場所」だったのだろうか、と。
もしかすると、私たちは場所だけではなく、
何かもっと別のものを求めているのかもしれません。
海外生活が長くなると、「帰りたい」という言葉のなかに、
寂しさ、不安、疲れ、喪失感など、さまざまな感情がグラデーションのように重なります。
だから、その気持ちを一言で簡単に説明できなくて当然なのです。
もしかすると私たちは、「帰りたい」と言いながら、
本当は別の何かを探しているのかもしれません。
昔の自分を裏切ることと、今の自分を大切にすること
海外生活をしていると、人生の大きな選択を重ねていく場面が増えるように思います。
どこで暮らすのか。
誰と生きていくのか。
何を大切にするのか。
そうした選択は、いつの間にか自分の一部として積み重なっていきます。
だから方向を変えることが怖くなるのかもしれません。
「ここまで頑張ってきたのだから」
「自分で選んだ人生だから」
そんな思いが、知らないうちに自分を支えていることもあります。
でも今は思います。
昔の自分を裏切ることと、今の自分を大切にすることは、
相反するものではなく、同じ人生の流れの中にあるのかもしれないと。
なぜなら、人は変わっていくものだから。
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海外生活の中では、気持ちが一つではないことがあります。
「日本に帰りたい」
そう思う日がある一方で、
「でもどうしよう」
そんな気持ちが同時に存在することもあります。
会いたいのに会うのが怖い。
帰りたいのに帰る決心がつかない。
前へ進みたいのに、何を選びたいのか自分でもわからない。
こうした矛盾する気持ちは、頭の中だけで整理しようとすると、
余計にわからなくなってしまいます。
だから、
「こんなことで相談していいのかな」
「うまく話せる自信がない」
「まだ自分の気持ちが整理できていない」
そう感じても大丈夫です。
悩みをきれいに整理しておく必要はありません。
深刻でなければ相談してはいけない、ということもありません。
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